【読書】日本海のイカ

「日本海のイカ」 著者:足立倫行
新潮文庫 ISBN: 4101022135

 

久しぶりに再読(2度目)

著者が日本海側の各港から漁船に乗り込んで、南は対馬から北は北海道までスルメイカの回遊を追ったルポルタージュ。

元は昭和60年にハードカバーで刊行されてその際の副題が、
「海からだけ見えるニンゲン社会の動悸」。これは文庫化にあたって削除されている。

スルメイカ漁を通して漁業の在り方、海を隔てた隣国との外交問題、漁業者の生活が描かれてはいるけどもノンフィクション作家のガチガチの社会派ルポルタージュという雰囲気は抑えられており、純粋に読んでいて楽しい作品に仕上がっているというのが再読後の感想。

 

最初の対馬では自分の食糧も持たず乗り込んだ船で船酔いと空腹に苦しむ著者も、港を転々とするにつれやがて船上作業や釣りまでするようになる。釣れたてのイカを船上で食べる。。
釣り好きは興味が湧かない筈が無いでしょう。

 

船上の取材だけでなく、小泊村(現・青森県中泊村)では船に乗らず出稼ぎ漁の留守中家庭にスポットを当てたりと本そのもののテーマもそうだが着眼点が面白い。

 

自分の中で最も印象的だったのが、石川県能都町宇出津漁港の漁師、寺分石松氏。
この方が漁師・釣り人として大変素晴らしい。

一部抜粋すると、

ほとんどの漁師は古い乾電池を無造作に海に捨ててしまう。僕はこのことが気になっていた。面積130万平方キロの日本海に単三乾電池一個を捨てたところで腐食した乾電池から流れ出す水銀は何ほどでもないが、イカ釣り機七台で一隻が七個、これがほぼ毎晩、しかも日本中で連日何千隻何万隻もとなると話は別だ。僕はどうにかして電池を捨てない漁師に巡り会えないものかと思っていた。とうとう出会った。それが寺分だった。

寺分は電池を取り換えると当然のように古い電池をポケットにしまい込んだ。七個全部をそうした。その電池をどうするのか尋ねると、家に持ち帰ってゴミの分別収集の日に出すと言う。乾電池に限らず海にモノを捨てないようにしているのだ、と。

僕はこの時寺分を単なるベテラン漁師ではないと思った。釣りの知識以上に、現代に生きる人間としての見識を持った人だと思った。
ひと通り話し終えたあと、寺分は右手で左手を揉みしだきながら言った。

「本当のところは、私自身単に釣りが好きなだけのことかもしれませんけどね……」

足立倫行『日本海のイカ』(新潮文庫刊) “豊穣の海の紳士”より一部引用

 

お手本にしたい方じゃないですか。しかも大変な愛妻家。未読の方はこの章だけでも是非読んでいただきたい。

実は今回の再読でこの部分がすっかり記憶から抜け落ちていたんだけど、このページの角が既に折られていた。初回に読んだ時にも心に留まるものがあったんでしょうね。

 

30年以上前の本なので登場人物や土地の現在を思うのも楽しめます。

 

釣り好きの方にお勧めの一冊です。
(外出を控えている期間に是非)

 

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